6月 1, 2015 - 煙突, 薪ストーブ    No Comments

煙突からの放熱とドラフトの関係

煙突と薪ストーブの理論、最終回の今日は煙突からの放熱によるドラフトへの影響について、考えていきたいと思います。

前回、前々回のおさらいとこれまでの考察の流れは以下をご覧ください。

・第一回 : 煙突と薪ストーブの理論
・第二回 : 薪ストーブの煙突と温度について

 
第二回では、ドラフトの強さは「煙突内の平均温度」に影響を受ける、とお話ししました。

そして、放熱をするシングル煙突と、放熱の少ない断熱二重煙突では、ドラフトに違いが出るんではないかと、考察しました。

 
ということで、煙突プランニングと煙突効果の関係を理論式から考察したいと思います。

まずは、煙突からどのくらい放熱されるのか、計算してみましょう。

 
計算式はこちらを参考にしました。
放熱の計算式

「断熱された円筒からの放熱」という式ですね。
そのまま、数値を入れると計算してくれるので、とても便利でした。

 
基本となる設定条件は以下の通りです。

 
煙突の条件

ちなみに、外気温は計算の便宜上、すべての煙突の外側の温度を5℃として計算しています。
また、その他に、

・1m毎に区切って放熱を計算
・断熱二重煙突は、セラミックウールを断熱材として想定
・断熱二重煙突は、ステンレスによるライナーやケーシングは無視

としています。

また、放熱による温度低下は、放熱の数値(ワット数)と空気の比熱・比重、ドラフトによる煙突内の通過速度(所要時間)を基に算出しています。

 
 
まずはプラン毎に温度低下の計算結果をご覧ください。

放熱計算

 
オール二重煙突の方は少し結果が良すぎる気もしますが、シングル煙突の方は概ねこんな感じかな、という印象です。
放射温度計などで煙突の表面温度を測ったことがある方は、感じが分かるかもしれませんね。

 
そして、以上の結果を基に煙突内部の平均温度を計算して、煙突効果の式へ各条件を入れて計算した結果が以下になります。

 
A : 煙突高さh=6m、シングル煙突4m、二重煙突2m
B : 煙突高さh=6m、オール二重煙突
C : 煙突高さh=4m、シングル煙突2m、二重煙突2m
D : 煙突高さh=4m、オール二重煙突

給気速度の比較

 
シングル煙突を4mも使っているプランAは、煙突高さ4mのプランDとほぼ変わらない結果となっていますね。

シングル煙突4mというのは少し極端な例ではありますが、シングル煙突を多用する仕様は望ましくない事が数字上からも分かります。

また、煙突内部の温度低下からわかるように、かなり排気温度が下がるので、煙突内へ煤が付きやすくなりますよね。

 

また、A→C、B→Dのように単純に高さを2m減らした時、ドラフトの変化は煙突の仕様によらず同じような変化が表れています。
これは、煙突の断熱性能とドラフトは大きな関係があることが見て取れます。

逆に煙突の高さが確保できない場合は、オール断熱二重煙突の仕様にすることで、ある程度ドラフトが確保できるともいえます。

 
 
ということで、三回にわたってお送りした薪ストーブと煙突の理論、いかがだったでしょうか?

煙突のプランニングは薪ストーブの性能を引き出す上で重要なポイントですが、その参考になれば幸いです。

5月 30, 2015 - 煙突, 薪ストーブ    No Comments

薪ストーブの煙突と温度について

みなさん、こんにちは。

今日も昨日のブログ「煙突効果について」に引き続き、煙突と薪ストーブについてちょっと理論的な面から考えてみたいと思います。

 
今日考えてみるのは、温度とドラフト(煙突効果)の関係です。

温かくなってくるとドラフトが弱くなって燃えづらい、というのは薪ストーブユーザーであれば経験したことがあるのではないかと思います。

で、それを数式から見ていくとどうなのか?というのが今日のテーマです。

 
ではまず少しおさらいですが、下の式が煙突効果の働きを表している式です。

煙突効果の式

 
ここで、考察する条件として

外気温To
・「冬の場合」= 5℃
・「夏の場合」= 25℃

煙突内の温度Ti
・「着火直後」= 50℃
・「巡航運転時」= 200℃

として、合計4つの条件を組み合わせてそれぞれ計算してみました。

 
そして、その結果がこちらです!

 
温度による煙突効果の比較

 
これを見てみると、

・着火直後は外気温の違いによる影響は大きい

ということがわかりますね。

今回の温度設定だと夏と冬で約25%もの違いが出ています。

 
逆に、温度が上がってくれば、外気温によるドラフトへの影響は5%程とそれほど大きくはないこともわかります。

夏でも煙突が温まってしまえば、問題なく燃やせる、ということでしょう。
(そこまでしたい方がいるかは別ですが。。。)

 

 
そして、煙突内の温度が上がるとドラフトは約2倍になっていますね。
これは煙突内の温度を高くキープすることの大切さが表れていると思います。

 
煙突効果の式の注釈にも書いてありますが、煙突内の「平均温度」がドラフトに影響するので、例えば

・「煙突は吹き抜けをずっとシングル煙突」
・「ストーブの口元付近だけはすごい温度が高い」
・「でも上の方にいくと放熱して温度は低い」

という場合は、口元と外気温の温度差が大きくても、それほどドラフトは得られないことになりますね!

 
また、逆に断熱二重煙突をしっかり使って、素早く煙突内の温度を上げることができると、外気温によるドラフトの影響を受けづらいともいえます。

 

今回の煙突効果理論のシリーズは次回でとりあえずまとめです。

今日の最後の方に書いたような、煙突のプランニングと煙突効果の関係を計算しています。
是非お楽しみに!

5月 29, 2015 - 煙突, 薪ストーブ    4 Comments

煙突と薪ストーブの理論

薪ストーブと煙突の関係性はとても重要です。

ということは、今ではかなり認知されてきているのではないでしょうか?
今日は煙突の働きについて、そこで何が起きているのか?、理論的にはどうなの?ということに注目してみたいと思います。

というよりも、むしろ、個人的に興味があるので色々考えてみました。

興味の無い方には全く面白味のないブログかもしれませんが、どうぞお付き合いください。

 
煙突の役目は「ドラフト」と言われる、「煙を排気する上昇気流」を発生させることです。

ドラフトが発生することで、高機能な二次燃焼を備えた密閉型の薪ストーブでも、ところてん方式に薪を燃焼する為の「酸素」を取り入れることができます。

「排気量」=「給気量」

なので、ドラフトによって排気されなければ給気もされず、薪ストーブが燃えることはできないんですね。

 
さて、「ドラフト」の大切さが分かったところで、その仕組みに目を移してみましょう。

ドラフトが発生する原因は「煙突効果」という自然現象です。
その原理はまたの機会に触れるとして、数式で書くと下のようになります(なるそうです)。

クリックしたら大きくなります。
煙突効果の式

 
給気速度Qというのは1秒間の給気量を表しています。
つまりはドラフトの強さを表している、と言えると思います。

 
で、この式を見ると、

・煙突の径を大きくするとドラフトが強くなる
・煙突の高さを高くするとドラフトが強くなる
・煙突内部の温度を上げるとドラフトが強くなる
・外部温度が下がるとドラフトが強くなる

こんなことがわかりますね。

どれも薪ストーブ屋さんの中では良く知られていることですが、こうやって式に現れると面白いですね。

 
そして、この式を使って、

・煙突の径が変わると、どのくらいドラフトが変化するか
・煙突の高さが変わると、どのくらいドラフトが変化するか

ということを計算してみます。

煙突効果の計算

煙突を1m伸ばすと、理論上では大体10%くらいドラフトが強くなるんですね。
実感としてはもっと変化があるように思っていたので、少し意外です。

 
それと煙突径による変化は大きいです。

150mmというのは東京ストーブで扱っている薪ストーブの一般的な煙突径です。

200mmは大型の薪ストーブや開放型の暖炉なんかで使います。

100mmはホームセンターなどでも売っている細い煙突ですね。

 
100mmの煙突だと、150mmの煙突の半分以下のドラフトしか得られないんですね。
そして200mmにすると8割弱もドラフトが増すとは。。。

単純ですが、なんだか興味深い結果です。

 
ちなみに、煙突の径は大きくなりすぎると排気が拡散して冷却されるので、逆にドラフトが低下することにもなります。
この辺のバランスは難しいですが、一般的な薪ストーブと煙突の組み合わせであれば、それほど気にする必要も無いですね。

 
 
実は、まだまだたくさん計算したのですが、長くなったのでまた続きを書きます。
それでは今日はこのへんで。

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